No.60 ☆ 人の眼が感知できる光の限界は・・・・
先日 村山義彦さん(元 根本特殊化学株式会社)より 1996年8月にアメリカの国際学会誌に発表した 原稿を頂きました。ありがたいことなのですが 当然のことながら英語論文で 横文字の苦手な筆者としては理解することができません。早速 当方が勤務している(財)日本染色検査協会の若手に 翻訳を依頼してなんとか目を通すことができました。
タイトルは「高輝度と長残光性をもつ 新しいタイプの蛍光体 SrAl2O4:Eu2+,Dy3+」(A New Long Phosphorescent Phosphor with High Brightness,SrAl2O4:Eu2+,Dy3+) となっていて 酸化タイプの蓄光原料に関する試験データ等と光る仕組みについてのものでした。
掲載された学会誌は〝 The Journal of The Electrochemical Society 〟Vol.143.No.8.August.1996 でこの原稿はネットでいまでも閲覧することができます。語学堪能な方は是非ご覧になってください。今回のこぼれ話の最後に URLを掲載しておきます。
この論文の中では 酸化タイプの新しい蓄光原料の解説がなされているのですが その関連で人間の眼の感知能力について書かれている部分がありました。こぼれ話No.28 に筆者もその話に触れているのですが 解釈に誤りがあったことが判りましたのでその部分の訂正をしておきたいと思います。
原稿の中で「おそらく医学検査で目の機能として 0.3mcd/m2まで感知能力がある・・・」という推論を掲載しているのですが 論文では人間の眼の光の知覚の下限は0.0032mcd/m2であると明記されていました。筆者の推測値よりさらに100分の1の光を認知できるということのようです。
その100倍の数値を当時の基準としてドイツの工業規格に用いられたことが判りました。長年疑問に思い続けていた謎が 今回頂いた論文のおかげで解消することができました。そういう理由で 人間は0.32mcd/m2あれば人間は視認できるという文章で拡まっていることも判明しました。
0.3mcd/m2の灯りをどの距離から視認できるかということまでは判りませんが ドイツ工業規格 「DIN67510 長残光性顔料と製品」に記載されている根拠がここにあったということです。当方の原稿訂正を兼ねて今回は取り上げさせて頂きました。
論文の内容は主に 賦活剤にユーロピウム(Eu)の他にジスプロシウム(Dy)を補助的に加えたことで ユーロピウムの活性化を促し 高輝度と長残光性を持つ蓄光原料を開発することができたということの解説とデータが掲載されています。
筆者にとって新鮮だったのは 賦活剤の効力として熱ルミネセンスの影響も加わって 高輝度性と長残光性の特色を打ち出しているというところです。いままでに読んだ解説と少し表現の異なる箇所なので また認識を新たにしなければなりません。理解 納得に少々時間を要するとは思いますがまた別のテーマに出くわした感じです。
発光システム研究会 こぼれ話
2011.11.20号
原稿担当:(財)日本染色検査協会
竹中 直(チョク)
The Journal of The Electrochemical Society のサイト
http://scitation.aip.org/JES